アタシたちのショートピース、あるいはショートホープ

一本の短いタバコのように消えうせていく、平和と希望ははかない。
たかだか5分か6分しか持続しないピースとホープ
でも、その火を絶やすことなく、小さな街角で、薄暗い部屋で、クラブで、アタシ達は時を過ごす。


本当に。


タバコがかっこいいなあ、って思うのは戦争映画に出てくるすごく若い兵士。いつもくだらないジョークを飛ばしつづけて、胸のポケットからヨレヨレに折れたやつを一本、取り出して、沈黙するときの、一瞬はひっそりとしのびよったさみしさや悲しさや哀愁が、小さな光をぐるりと濃い闇となって囲んでいる。それに、焼け跡でシケモクを拾って爪楊枝に指して吸っていた、ズタボロの小さな子供達の笑顔!!だって、ゼッタイに忘れられないくらいにかわいくて、かっこいい。


でも、もう、そんな時代は戻ってこない。


満員電車の中で吹きかけられる、肺も肝臓もどっぷりとニコチンにつかりきったハゲオヤジの息だとか、際限なく、だるーい会話と同じようにくすぶりつづけ、部屋の上半分を満たしてしまった煙。風俗嬢の待合室で。


煙だけをとっても、こんなに変わってしまうものなのかあ、って、思う。


最近、タバコのデザインがどんどん変わっていく。多分、それは、時代が変わろうとしているからなんだろうな、って感じる。しかもそのデザインが、こう、なんていうか、サイバーな安っぽいデザインなんだ。スパーメンソールだとか、クールだとか。若葉とかエコーとかはずっとかわらないでほしいな。ゴールデンバッドが変わったのは、ちょっと、な。クラブイベントにタバコ会社がタイアップしている光景には、もう、アキアキ。特にWOMBは多いな。あそこの社長は元天井桟敷(座長、寺山修二)のメンバーで今はWOMB以外にも九鬼というAVメーカーの社長でもある、サブカルチャーを地で行くヤクザみたいなおっさんだ。(2回ほど会ったことがある)ああいった御仁から「今」を見ているとどうなんだろう?バブルとか。何してたんだろう?


最近、全共闘世代という世代に会うことがちょっとづつ増えてきた。


唐十郎が芝居でヤクザから借りてきた本物の拳銃を撃ったり、三島の生首の写真が載ったポスターが街中にはられていたり、ある、アーティストが裸で新宿の街を3時間も走りつづけたり・・・・(これは何百人という「大衆」が彼を追いかける警察官の邪魔をしたからだ)



アタシ達はどこからきたのだろう・・・・


そして。


どこに行くのだろう?


タバコの煙一つ一つの粒子を集めて、またタバコに戻すことが出来ないように、



アタシ達は不可逆的な世界を生きる。


アタシ達の信じる真理や、希望や、信仰は全てショートホープであり、ショートピースだ。それは5分や、6分しか持たない。あわい煙のようなもの。


それでも、その、せつなさや弱さに、この世界の豊かさが、強さが、あるような気がする。本当に、役に立たない、感のようなものなのだけど。